金融庁が実施した「NISA口座の利用状況調査」によれば、2024年6月時点の新NISA口座開設数は2,427万口座となっており、非常に多くの方がNISAを利用して投資をしています。
一方で、自分が行っている投資の内容をよく理解せずにNISAを始めたという方も多くいらっしゃると思います。
私は金融機関で20年間勤務し、FP1級の資格を保有しています。
金融機関に勤務する中で、多くの方の資産形成をお手伝いしてきました。
そこでこの記事では、NISAで投資をする方の多くが利用する投資信託の仕組みをわかりやすく解説します。
この記事を読めば、投資信託の仕組みが理解でき、どのような運用をしていけば良いのか、わかるようになっています。
資産形成は、長期投資が前提となります。長期投資をするには、自分がどのような商品に投資しているのか理解しておくことが大切です。投資商品のことを理解するために、ぜひ最後まで読んでください。
投資信託とは集めた資金をプロが運用する金融商品
投資信託とは、投資家の皆さんから集めたお金をプロが運用する金融商品です。投資の結果得られた利益は、投資家の皆さんに還元されます。
投資初心者の方が、相場を見ながら株式等を売買していくのはとても大変なことです。
そこで、投資信託では皆さんから集めた資金を運用のプロである「ファンドマネージャー」が運用を行います。
投資信託は、皆さんに代わってプロが運用を行う商品なので、初心者でも始めやすい金融商品となっています。
投資信託には3つの専門機関が関わっている
投資信託には3つの専門機関が関わっています。
- 販売会社(銀行・証券会社など)
- 運用会社
- 信託銀行
出典:一般社団法人 投資信託協会
この「3つの機関が関わっていること」は、後で説明する手数料に関係してきます。
少し難しいところですが、手数料の仕組みを理解するのに大切な知識になりますので、ご確認ください。
まず、販売会社です。
販売会社は銀行や郵便局、証券会社等の「投資信託を販売する会社」です。
一般的な銀行や証券会社をイメージするとわかりやすいと思います。
次に、運用会社です。
運用会社は、経済情勢の分析から投資信託の説明書(目論見書)・報告書の作成、運用の指図等を行っています。運用のプロであるファンドマネージャーは、この運用会社に所属しています。
最後に、信託銀行です。
信託銀行は、皆さんが投資したお金を管理しています。運用会社から指示を受けて、株式等の売買も行います。資金を管理している金庫番というイメージです。
この3つの専門機関がそれぞれの役割を果たすことで、投資信託が運用されています。
投資信託に関する手数料
続いて、手数料について確認してみましょう。
投資信託に関する手数料は以下の3つです。
- 購入時手数料
- 信託報酬
- 信託財産留保額
投資信託を選ぶ上で、手数料は非常に重要な項目です。
どのような手数料がかかるのか確認していきましょう。
まず、購入時手数料です。
購入時手数料は、投資信託を購入した時に販売会社に対して支払うものです。
手数料の率は販売会社が決めていますので、同じ投資信託でも購入する販売会社により異なります。
無料(ノーロード)のものから、3%程度のものまであります。
初心者の方は、まず無料のものから始めてみると良いでしょう。
次に、信託報酬です。
信託報酬は、管理手数料と考えるとわかりやすいでしょう。
投資信託の運用中は、市場の分析や報告書の作成等、様々な経費がかかります。
運用中にかかる経費を信託報酬として皆さんが預けている資産から差し引き、販売会社・運用会社・信託銀行の3つで分けています。
信託報酬は、投資信託を持っている間、常にかかる費用です。投資信託によって率が変わりますので、購入前に確認するようにしましょう。
最後に、信託財産留保額です。
信託財産留保額は、解約する際、投資信託に残すお金のことです。
3つの機関に支払われるお金ではないため、正確には手数料ではありません。
投資信託を解約するには、株式の売買等が発生し、それに伴い手数料等の費用が発生します。発生した費用は、解約する人が負担するという仕組みです。
信託財産留保額も投資信託によって率が異なり、無料のものもあります。
購入前に確認してみましょう。
基準価額とは投資信託の値段のこと
これまで投資信託に関わる機関や、手数料について確認してきました。
ここからは、利益の仕組みについて説明していきます。
投資信託の利益の仕組みを理解するには、投資信託の値段である「基準価額」について理解することが必要です。
まずは、基準価額とはどのようなものなのか、確認していきましょう。
取引の単位は「口数」
投資信託の取引の単位は「口数」となっています。基準価額は、1口あたり、または1万口あたりの価格となっています。
一般的に公表されるのは、1万口あたりの価格です。
公表は1日1回
基準価額の公表は原則1日1回です。
営業日に1回、その日の基準価額が公表され、販売会社のホームページ等で確認することができます。
投資信託には、「基準価額」という値段があり、原則1日に1回、公表されているということを覚えておいてください。
投資信託で得られる利益
では、投資信託で得られる利益について説明していきます。
投資信託で得られる利益は以下の2つです。
- 売却益
- 分配金
売却益
売却益は、買った時より高い値段の時に売ることで得られる利益のことです。
安い時に買って高い時に売るという、一般的な投資の利益としてイメージしやすいと思います。
分配金
続いて、分配金です。
分配金は、運用により得た利益を投資信託の決算ごとに、投資家に分配するお金のことです。分配金が出る投資信託もあれば、分配金が出ない投資信託もあります。
この分配金には2つの種類があります。
- 普通分配金
- 特別分配金
普通分配金は、運用した結果出た利益が分配されるものです。
特別分配金とは、元本部分を投資家に払い出すものです。
元本部分であるため、皆さんが預けているお金を受け取り、運用されるお金が減るイメージです。
特別分配金について理解されていない方が多く、分配金を受け取ったら利益が出たと考えてしまう方がいます。
実際には、その分配金が特別分配金であった場合、自分が預けたお金を受け取っているだけなので注意が必要です。
また、 分配金を受け取る投資信託では、複利効果を享受することができません。
アインシュタインが「人類最高の発明」と揶揄した複利効果は、資産形成にとって大きな力となります。
分配金を受け取る投資信託を購入する場合は、複利効果は得られないことを理解しておきましょう。
投資信託の利益にかかる税金
上記した「売却益」「普通分配金」に対しては20.315%の税金がかかります。
売却益と普通分配金は利益にあたるからです。
一方、「特別分配金」には税金はかかりません。特別分配金は、利益ではなく元本部分であるためです。
また、NISAを利用して投資をすることで、売却益と普通分配金に対する税金も非課税となります。投資をする際には、NISAの利用を検討しましょう。
注)分配金再投資で再投資した結果、NISAの非課税枠を超えた部分については、課税されます
メリット
これまで、投資信託の仕組みについて説明してきました。
ここからは投資信託のメリット・デメリットについて解説していきます。
- 少額から購入できる
- 分散投資でリスクを減らせる
- 専門家に運用を任せられる
少額から購入できる
投資信託は、1万円程度から購入できます。積立型の投資信託は、100円から購入できる金融機関もあります。
最低金額は、金融機関によって異なりますが、一般的に株式の購入と比べて少額から開始できます。
分散投資でリスクを減らせる
投資信託を1本購入すると、自動的に分散投資ができます。
限られた銘柄に投資をしておくと、その銘柄が値下がりした場合、受ける影響が大きくなります。投資のリスクを小さくするためには、多くの銘柄に分散投資することが大切です。
例えば、S&P500に連動する投資信託を購入した場合、1つの投資信託を購入するだけで、アメリカの優良企業500社に分散投資することができます。
個人で500社の分析を行い株式を購入をすることは、とても手間のかかることです。その手間を省略できることは投資信託の大きなメリットです。
専門家に運用を任せられる
専門家に運用を任せられるのも大きなメリットです。
自分で直接、株式を購入する場合は経済情勢等を確認して売買の判断をする必要があります。
投資信託では、市場の分析や銘柄の売買を専門家に任せられるので、専門知識のない初心者の方でも始めやすいというメリットがあります。
デメリット
初心者の方が投資を始めるにあたってメリットの多い投資信託ですが、デメリットも存在します。ここでは、初心者の方が確認しておく必要のある投資信託のデメリットについて説明します。
- 元本保証がない
- 手数料がかかる
元本保証がない
投資信託は元本保証のない商品です。投資で利益が出た場合は、投資家に還元されますが、損失が出た場合のリスクを負担するのも投資家です。
元本保証のない商品であることを十分認識して投資を始めましょう。
手数料がかかる
投資信託には、「購入時手数料」「信託報酬」「信託財産留保額」という手数料やコストがかかります。この手数料やコストは、低い方が資産形成にとってはプラスになります。
それぞれの手数料がいくらなのか、投資信託を購入する前に確認するようにしましょう。
初心者向け投資信託の始め方
最後に、初心者の方が投資信託を購入する時の始め方について説明していきます。
- 手数料が低いものを選ぶ
- NISA口座で運用する
- ネット証券を利用する
手数料が低いものを選ぶ
手数料は皆さんが預けるお金や利益から引かれるものなので、できるだけ低いものを選びましょう。運用する期間が長くなるほど、手数料が利益に与える影響は大きくなっていきます。
NISA口座で運用する
NISA口座で運用することで、利益にかかる税金を非課税にできます。
特に、「つみたて投資枠」で利用できる投資信託は、手数料が安く過去の運用実績も良い、長期投資に適した商品に限定されています。初心者の方は、つみたて投資枠で利用可能な商品から選ぶようにすれば、手数料が低く優良な投資信託を購入することができます。
ネット証券を利用する
ネット証券は、商品数も豊富で手数料が低い商品も多く取り扱いされています。
申し込みや換金等がネットで完結するため、購入時手数料や信託報酬が安くなる傾向にあります。投資を始める時はネット証券の利用を検討してみてください。
まとめ
この記事では、投資信託の仕組みについて説明してきました。
投資信託は、皆さんに代わって専門家が運用を行う金融商品です。
手数料等のコストはかかりますが、初心者の方が投資を始めるには使いやすい商品です。
メリット・デメリットを理解して、投資信託を資産形成に役立てていただければと思います。
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